この薬は即効性があり、効果がはっきりと実感できる仕様になっている。痛みはすぐに消え、擦り傷程度なら一日で完治する。刺し傷や中程度の傷なら三日ほど、重傷でも一週間程度で治癒する。 服用量によって効果は増幅し、二本飲めば回復速度は二倍となる。患部に直接かけた場合も同様で、二本分を使えば治癒がさらに加速する。ただし、効果が上がるのは最大で二本まで。三本、四本と増やしても、それ以上の効果は得られない。
「これは美味いな。薬と聞いて苦くて不味いと思ってたが……って……あれ? 痛みが無くなって血も止まったな! なんだこれは! スゴイな!」
冒険者の声がデカくて、宣伝効果もバッチリだな……ありがたい。彼の興奮した声に、周りの冒険者たちが注目し始めた。お陰で注目されて人だかりが出来たけど……軽傷者に使っても宣伝にならないので、俺はケガの程度がヒドイ人を探していた。
「うちのパーティに重傷を負ったヤツがいるんだ! 是非1本貰えないか? 頼む!!」
別の冒険者が、焦った様子で駆け寄ってきた。
「でしたら食堂まで運んで来て下さい」
慈善事業じゃなく宣伝なので、皆が見てる前で治さないと意味がないので運んできてもらう。宣伝だからという理由だけじゃなく、不衛生な外より室内で処置をした方が良いだろ。
「分かった。直ぐに運んでくる!」
冒険者は力強く頷き、ギルドの外へと駆けていった。運ばれてきた人は腹部にモンスターの爪で引き裂かれ、明らかに重傷だった。その傷口からは、生々しい血が滲んでいる。これは……マジで痛そう! 前世の記憶の医者でも大手術だね……内臓まで切り裂かれてるし……爪なので3箇所も引き裂かれてるし。まー死んでいなければ治るでしょ……多分。重傷だし2本使うか……。
「今回は特別に2本使わせてもらいます」
俺はそう言って、2本の治癒薬を取り出した。
「助かるか? 大丈夫か? 治りそうか? コイツは親友なんだ……」
運んできた冒険者は、不安と期待の入り混じった表情で俺を見つめた。
「はい。大丈夫です。ですが最低3日間は安静にしてればですけどね……。痛みが消えたからって言う事を聞かずに出歩いたり、あり得ないと思いますが依頼を受けてモンスターの討伐に行って悪化して死んでも治癒薬のせいにしないでくださいね」
「ああ。勿論だ。良く言い聞かせる!」
冒険者は真剣な表情で頷いた。テーブルに寝かせて、治癒の薬を飲ませてから傷口にも薬を掛けた。薬が傷口に触れると、シューと微かな音が聞こえる。意識が無く死んだようにグッタリしていた冒険者が、わずかに身じろぎ意識を取り戻した。
「クソっ!! 油断した!」
彼は突然意識を取り戻し、起き上がると大きな声を上げた。怒れる程に回復し、その声に周囲の冒険者たちは驚きの声を上げた。
「あの……痛みが無いからといって、あまり動くと傷口が開いちゃいますし、治りが遅くなりますよ」
俺が忠告すると、彼は首を傾げた。
「はぁ……? 傷口? ……んっ!?」
自分の腹部を見て、青褪めていた。傷口が治りかけていることに気づき、彼は呆然としている。
「うわっ! なんだコレ! 痛みが無かったから……気づかなかった!」
「一週間くらい安静にしてれば治りますよ。でも2本使ったので……3日程で治るかもしれませんけど」
「その薬の価格は?」
彼は興奮した様子で尋ねた。
「1本、銀貨1枚です」
「……銀貨1枚で、この効果か……是非買いたい! 今は持ち合わせが無いが……家に帰ればある! どこに行けば買えるんだ?」
「この通りの空き店舗になってる場所で、明日から販売を開始する予定です」
「そうか。是非購入をしに行くぞ」
こんな感じで中傷者、重傷者を治して宣伝をしておいた。ギルドの中は、治癒薬の噂で持ちきりになっている。
治癒薬と体力回復薬も売り込んで好評になったので、次の日からギルドで販売をしなくても良いのかも?
食堂の一部を借りられて、傷を負った人を待っている時に、冒険者が話をしていたのを聞いた。「そういえばよ。町を出て道を歩いてたら中級レベルのモンスターが首を斬られて、何体も倒されてたな」
「ああ、俺も見たけど、凄腕の冒険者だなアレは……一太刀の切断面だったぞ。骨もスッパリと斬れてたな……あれはスゴイぞ!」
「そうだな……モンスターに争った傷も無かったから、パーティで戦闘じゃないな。単独での討伐……か、すげぇな。」
あのモンスターって中級だったんだ……まあ低級って感じもしなかったしなぁ。 「俺達ならパーティ全員で攻撃をして、やっと1体倒せるかって感じだぞ……でも、まぁ無理だろうな。犠牲者が確実に出るな」彼らの声には、諦めと羨望が混じっていた。
「誰が倒したんだろうな……是非うちのパーティに入って欲しいな」
「バカか! そんなすごい者が弱小パーティに入るわけ無いだろ!」
「それもそうか……! あはは……」
彼らは笑い声を上げたが、その目にはまだ、希望の光が宿っているように見えた。
夜も遅くなって来たので、ミリアに声を掛けた。
「夜遅くまで付き合わせちゃってゴメンな。助かった!」
「いいえ。お役に立てて嬉しいですわっ」
ミリアは、にこやかに答えた。その顔には、疲労の色は見えない。
「それじゃ。俺は明日の朝早くに空き店舗に向かうな。ミリアはどうするんだ? 明日は忙しくなると思うし、明後日くらいにお礼と報告に屋敷に行けば良いか?」
「明日もご一緒させて下さい♪」
ミリアは俺の腕をぎゅっと掴み、その瞳は、まるで星のように輝いていた。
この薬は即効性があり、効果がはっきりと実感できる仕様になっている。痛みはすぐに消え、擦り傷程度なら一日で完治する。刺し傷や中程度の傷なら三日ほど、重傷でも一週間程度で治癒する。 服用量によって効果は増幅し、二本飲めば回復速度は二倍となる。患部に直接かけた場合も同様で、二本分を使えば治癒がさらに加速する。ただし、効果が上がるのは最大で二本まで。三本、四本と増やしても、それ以上の効果は得られない。「これは美味いな。薬と聞いて苦くて不味いと思ってたが……って……あれ? 痛みが無くなって血も止まったな! なんだこれは! スゴイな!」 冒険者の声がデカくて、宣伝効果もバッチリだな……ありがたい。彼の興奮した声に、周りの冒険者たちが注目し始めた。お陰で注目されて人だかりが出来たけど……軽傷者に使っても宣伝にならないので、俺はケガの程度がヒドイ人を探していた。「うちのパーティに重傷を負ったヤツがいるんだ! 是非1本貰えないか? 頼む!!」 別の冒険者が、焦った様子で駆け寄ってきた。「でしたら食堂まで運んで来て下さい」 慈善事業じゃなく宣伝なので、皆が見てる前で治さないと意味がないので運んできてもらう。宣伝だからという理由だけじゃなく、不衛生な外より室内で処置をした方が良いだろ。「分かった。直ぐに運んでくる!」 冒険者は力強く頷き、ギルドの外へと駆けていった。運ばれてきた人は腹部にモンスターの爪で引き裂かれ、明らかに重傷だった。その傷口からは、生々しい血が滲んでいる。これは……マジで痛そう! 前世の記憶の医者でも大手術だね……内臓まで切り裂かれてるし……爪なので3箇所も引き裂かれてるし。まー死んでいなければ治るでしょ……多分。重傷だし2本使うか……。「今回は特別に2本使わせてもらいます」 俺はそう言って、2本の治癒薬を取り出した。「助かるか? 大丈夫か?
多分だけど人気が出れば偽物が出回ってくると思うので、空き瓶を利用して販売されても信用に係るので、使い切ると瓶は消滅して消えるように設定した。魔法が無い世界なので真似は出来ないと思う。それと偽物が作られないように、見た目にも薄い透明なピンク色の液体で、ほのかにピンク色に光るようにしてあるので、これも真似が出来ないと思う。しばらくして、俺は受付嬢に近寄り感想を聞こうと声を掛けてみた。「使ってみました?」「うん。使った! 使ったよ。なにコレ!? スゴイんだけど! 子供の時の肌に戻って……ぷにぷにして、しっとりしてる! もぅ最高~♪」 受付嬢は興奮した様子で、自分の頬を触りながらまくしたてた。その肌は、確かに瑞々しく輝いている。だけど、お姉さん……20代前半だよね!? そんな肌を若返らせて……どうするの? 10代の肌は違うか。ぷにぷにだもんな……と、ミリアの頬を見て納得する。「説明をした通りですけど、持続するのは明日の今頃までですよ。今の技術ですと、これが限界なんですよ」「そうなの? うわぁ……。で、値段は……?」受付嬢は、がっかりしたような声を出し、すぐに恐る恐る価格を尋ねてきた。「先程のサイズの瓶で銅貨20枚です。大瓶ですと銀貨6枚で33日分で3日分お得ですよ」「あぁ……大瓶が欲しいけど給与日前で厳しいんだよね。給与日まで小瓶で我慢する~明日も来るんでしょ?」 受付嬢は期待に満ちた目で俺を見上げた。返事をしないでいると慌てた様子のお姉さん。「えぇ~なによそれ……。来てよ~ねぇねぇ~お願いっ」 彼女は俺の服を掴んで揺すってきた。その瞬間、ミリアが頬を膨らませて、怒った表情で近づいてきた。「ユウヤ様。何をされてるのかしら?」 ミリアの声には、明らかに不機嫌な色が混じっている。「えっと&h
「ギルドマスターは居るのかしら?」 ミリアが毅然とした口調で受付嬢に話しかけた。その声には、貴族ならではの有無を言わせぬ響きがある。「はい? まぁ~居りますが、約束をされていなければお会い出来ませんよ。お約束はお有りでしょうか?」 受付嬢は、ミリアの纏う普通とは違うオーラを感じ取ったのか、俺との対応とは打って変わって、少し戸惑った様子で答えた。「お手紙を届ける事は出来ますわよね? 急ぎの件だと仰って頂けるかしら」 ミリアの高圧的な口調に、受付嬢はすっかり圧倒され、素直に従って席を立ち、手紙を届けに行った。その背中は、どこか焦りを帯びているようにも見えた。 しばらくすると、ギルドマスターなのか、男性職員が慌てて出てきた。彼は受付に並ぶ人達を見回し、後から追うようにして来た受付嬢に誰なのかを聞いているようで、受付嬢が指でこちらを差した。「き、君達が、この手紙を?」 ギルドマスターらしき男性は、息を切らしながら問いかけてきた。俺は内容を知らないのでミリアを見た。「ええ。そうですわよ。それが何か?」 ミリアは涼しい顔で答える。「この手紙は、どうやって手に入れたんだ? どういう経緯で書いて頂けたんだ? 本物なのか? 偽物だとしたら重罪だぞ!」 ギルドマスターは、興奮した様子で矢継ぎ早に質問を投げかける。その顔には、焦りと疑念が入り混じっている。 ミリアは何の手紙を渡したんだ? 誰からの手紙を渡したんだ? この慌て方は……とても偉い人からの手紙だよな……領主様からの手紙か? だとしたら父親から書いてもらった手紙か。さすが貴族のお嬢様だな……。「そんなに、まくし立てられましても困りますわ」 ミリアは眉一つ動かさず、冷静に言い放った。「平民の君達が頂けるような手紙では無いだろ!」 ギルドマスターは、まだ疑いの目を向けてくる。「ですが、本物ですわよ? 蠟封の印と手紙の紙の透かしを見れば分かりますよね?」
ミリアは不承不承ながらも頷いた。納得してない様子だったので、もう一度、笑顔で念を押した。「ね?」「はいっ♪」 ミリアの機嫌が再び直ったのを見て、俺は安堵した。「ここに居ると、危険そうなので出ていきたいのですが……」 俺は総隊長に言った。「はい。本当に有難うございました。助かりました……ユウヤ様」 総隊長は深々と頭を下げた。名前も覚えられて、『様』付け? ミリアがムッとした表情で、再び総隊長を睨んだ。その視線は、有無を言わせぬ圧力を放っている。「次は無いですわよ……分かりましたか?」「はい! 全員に言い聞かせます!」 総隊長は震える声で答えた。兵士全員が、まるで一糸乱れぬように頭を下げてきた。彼らの額には、冷や汗が滲んでいるのが見て取れる。 ん? なんだかとても感謝されてるんだけど……そこまで?「じゃ、じゃあ行こうか?」 俺はミリアの手を取った。「はぁい♪」 ミリアは嬉しそうに俺の腕を組み、詰め所を出た。外に出ると、またミリアではない男性の怒鳴り声が聞こえた。 今日は俺が建物から出ると、怒鳴り声が良く聞こえてくる日だなぁ……。「先程は、ビックリしましたわ~ユウヤ様ったら……もぉ♡」 ミリアは腕を組み、俺の顔を見上げてきた。その頬は、まだほんのりと赤みを帯びている。「皆が見てなかったから大丈夫でしょ?」 俺はそう言ったが、ミリアは頬をさらに赤くして、恥ずかしそうに答えた。「……はいっ♪ 今度は……ユウヤ様の意思ですわね?」「まぁ……そうだね。俺の意思だね」「そうですか~嬉しいですわっ♡」 ミリアは幸せそうに目を細めた。
ん? 何この学校で恐い担任が朝、教室に入ってきて静まり返るのと同じ感じは……。見た目は可愛らしい美少女なのに? そんなに、お貴族様は権力があるのかな? あ。警備兵って、もしかして領主兵だからかな? それでミリアは領主の娘で雇い主の娘だから?「すみません……ミリア様」 お偉いさんが恐縮したように呟いた。「ふんっ! 1日に、わたくしの大切な方を2回も捕らえるなんて、わたくしに対しての嫌がらせなのかしら……」 ミリアは顔を曇らせ、明らかに不機嫌な様子で言った。その声には、怒りの感情が込められている。「そのような事は決してありません! どうかお許しを……」 お偉いさんは顔面蒼白になり、必死に弁解する。「まぁ……俺みたいな子供がアクセサリー店に入ったから怪しまれて当然だよな」 俺は場を和ませようと、軽い調子で言った。「何を仰っているのかしら? わたくしだって、たまにですがアクセサリー店に入りますわよ?」 ミリアは、きっぱりと言い返してきた。「それはミリアがお金持ちだって皆が知ってるからでしょ? 俺みたいなお金が無さそうな格好で入ればね……頭が良いミリアなら分かるんじゃない?」 俺がそう指摘すると、ミリアの表情が一瞬和らいだ。しかし、すぐにまたご立腹になった。「それでも捕らえた兵士は許せませんわっ。もぉ!」 ミリアは足を踏み鳴らし、不満を露わにする。連れてきた兵士の顔色が悪くなって座り込んでしまった。その体は震えている。 ん? 死ぬわけでも無いのに、そこまで怯える事なのか? それとお偉いさんも顔色が悪くなってるけど? 何か罰でもあるのか? そこまで怯える意味が分からないけど俺のせいなんだよな。はぁ……あまり気乗りしないけど……。「えっと……ここの責任者って
「護衛を男1、女1、メイドさんを1人でお願いします」 俺の提案に、護衛の責任者は顔をしかめ、即座に言い放った。「それは無理です!許可できません!」 その声には、一切の妥協が感じられない。「でしたら俺、一人で行くので付いてこないでください。ちょっと、目立ち過ぎなので……」 俺はきっぱりと言い放った。「平民服を着て平民を装ってるのがバレバレになってるし……平民が護衛を付けてる訳が無いし。お金持ちや重要な人物だから護衛を付けるのですよね? 今回の行動で顔を覚えられてしまいますよ?」 俺の言葉に、ミリアは表情を硬くし、護衛の責任者を鋭く睨みつけた。その視線は、まるで氷のように冷たい。責任者はゴクリと唾を飲み込んだ。「一応、今日は店舗を調べる予定だったからさ、ちゃんと調べないと。昼食と色々と話しが出来て楽しかったよ。ありがとね」 俺は、これ以上揉めるのを避けるように、ミリアに柔らかく話しかけた。「そうですか……ううぅ……」 ミリアは悲しそうに眉を下げ、ウルウルと瞳を潤ませながら俺を見つめてきた。その瞳は、まるで今にも零れ落ちそうな露を含んでいるようだ。「あの……次は、いつお会いできますか?」「明日も町の中にいると思うけど……ドレスを着て護衛を大量に連れて会いに来ないでくれるかな。お金持ちの知り合いが居ると思われて店舗の価格を上げられそうだし」 俺がそう言うと、ミリアはパッと顔を輝かせた。「分かりましたっ! むぅ……」 彼女は不満げな声を漏らし、再び警護責任者を睨みつけた。責任者はビクリと肩を震わせた。「ちなみに、もし会いに来られるなら護衛とメイドさんも普段着でお願いしますね。平民でメイドに護衛を連れて歩いてる人いないですし」「はいっ。分かりましたわ」 ミリアは素直に頷いた。